「幻」の枯山水庭園 (京都市)
 
     



京都の枯山水庭園  桃山時代の庭園  



京都・洛中のど真ん中、一見すると町中でよく見かけるような普通の寺院に、他では決して見られない個性豊かな名園があります。









よくありがちな枯山水――。ではなく、川の流れを砂ではなく、鱗形の石を敷き詰めて表した見事な造形。
ほぼ同じ形状、色合い、大きさの石をここまで美しく並べた庭はとても希少な存在です。







鱗形の石の効果は抜群で、まさに橋の下から水が流れる光景だけでなく、音まで聞こえてくるような写実性









この瀟洒な庭園の特徴は、水の流れを表した美しい鱗形の石だけではありません。
庭園でひときわ目を引くのは、小ぶりながらも大きな存在感を示す燈籠「瓜実燈籠」。
室町幕府の最後の将軍、十五代足利義昭ゆかりという歴史的にも大きな意義を持つ銘品とされています。







瓜実燈籠の右後ろにある白い筋が入った石「烏帽子石」も足利義昭との関連が伝えられており、
この石に義昭が烏帽子を掛けたことからこの名が付いたとされています。







説明が前後しますが、この寺院の庭園は、庭を愛好していた足利義昭を招くために織田信長が作庭した――という、歴史的にとても大きな意義を持つ存在






桃山時代の初期に作られた後、荒廃していた庭を重森三玲が「都林泉名勝図会」を参照して1961年(昭和36年)に忠実に復元しました。
重森三玲の庭園はどの庭も最高の評価を受けていますが、この庭の復元は素人から見ても偉業だなぁと痛感
(鱗形の石も、重森氏が当時の庭を忠実に復元しました)。










さらにこの庭ではこの手水鉢「呼子手水鉢」も、瓜実燈籠や烏帽子石と並ぶ銘品とされています。






わずかな敷地の洛中の寺院に残されたこの名園は年に一度だけ、10月に公開されることが多いようです。
敢えて「幻の枯山水」として名前を伏せたのは、原則として庭も撮影禁止となっているため。
諸事情を説明して特別に撮影の許可を得たものの、
通常は撮影禁止となっている庭を大きく実名で掲載することもどうかなと思い、寺院名を伏せたことをご了承ください
(許可をもらった〜と大はしゃぎで、加工しすぎの写真を載せていたりするホームページもありますが、自分は少し節度を持ちたいなと)
名前を伏せたことはあくまでも自己満足的な対応なので、関連人物の名前などで寺院の名前はすぐ検索に引っかかるかもしれません。
大徳寺などのように有名寺院ではありませんが、造形も歴史的な経緯も特筆に値するこの庭。
公開期間中にはぜひ拝観されることをお勧めします。



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