旧・村井兄弟商会たばこ工場

京都の近代建築 京都の煉瓦建築  地図 東山五条~七条の庭園  村井吉兵衛旧邸宅


竣工:明治33年 設計:横河工務所(松井貴太郎) 施工:大林組 平成21(2009)年解体


大きくカーブする緩やかな坂道の途中、
古い町家が並ぶ馬町
うままち通(渋谷しぶたに街道)に突然姿を現す煉瓦造りの重厚な建物。
実はこの煉瓦建築は、100年以上も前にたばこ工場として建てられたもので、
当時は2000人以上の労働者がここで両切りたばこを作っていたとか。
街中にこれだけ大規模な煉瓦建築の工場が残されていたのは奇跡的だったのですが、
関西テーラーの所有を経て、残念ながら2009年に解体されました。
現在は特別養護老人ホーム「修道洛東園」に生まれ変わり、石碑のみが残されているようです。
この工場は「煙草王」として京都だけでなく、日本の実業界に大きな足跡を残した実業家、村井吉兵衛が経営していました。

 


飾り気のない煉瓦造りの建物が木造の町家と微妙にマッチしているこの風景は、煉瓦建築が多い京都ならでは。







なだらかな坂道の途中に突然姿を現すこの建物、かなり好きだったのですが、取り壊されてしまったんですね。











保存に向けてさまざまな取り組みが続けられていたようですが、最終的には取り壊しに。
老朽化などを考えると仕方がないのかな。こればかりは何の関与もしていない部外者が口出しできる立場ではないので。
ただ日本で初めて両切りたばこの生産を行った工場で、
近代化に必死だった明治時代の京都で実施されたということを今に伝えるとても大きな記念碑的存在だったことを考えると、
行政の手で保存に向けた何らかの方法を打ち出してほしかった気もします。








「和」の街並みに煉瓦建築が自然に溶け込んでいる様子は、自分にとって京都の原風景。
そのような景色が消えていくのも寂しいですね。





建物の端っこに鳥の彫像。こういう小粋な装飾が近代建築の醍醐味だったりもします。





村井吉兵衛は、円山公園の横に建つ長楽館の所有者だったことでも有名ですね。
京都にはいまもオムロンや任天堂、島津製作所、京セラ、村田機械など時代の先端を行く大企業が多く存在しますが、
京都が戦前から新産業の揺籃の地になっていることはあまり知られていない事実。
「伝統と文化」のイメージにかき消されがちですが、多くの実業家が生まれた場所であることも忘れないでいたいです。



旧村井吉兵衛邸宅(Cafe Kawataro)

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