旧邸御室 茶室「双庵」と中庭





【所在地】 右京区 【地域】 衣笠・御室の庭 【庭の形態】 邸宅・別荘の庭 【面積】 中規模
【建築者】 岡本勝次郎 【竣工時期】 昭和12年(1937年) 【作庭者】 不明 【参照】 公式サイト
【所有者】 祝部鼎二→阿部喜兵衛→山本三夫(山三製材所創業者)→同氏次女、村田章代氏
【公開形態】 期間限定(主に5~6月) 【撮影】 公開中は自由 【訪問日】2023年6月
※建築者は京都市のサイト「京都を彩る建物や庭園」参照







原則として、新緑の季節のみ一般公開される「旧邸御室」。
嵐電を挟んで仁和寺と反対側、
御室(おむろ)の住宅街でひときわ目立つ土塀と風格ある玄関を入ると、洗練された空間が拡がります。






双ケ岡(ならびがおか)から伸びる傾斜を活かした名園として密かな人気だったのですが、
2023年6月に訪れた時は、何回かテレビで紹介されたこともあり、多くの来訪者でにぎわっていました。
その人気の秘密は、磨き抜かれた大広間の和机(原材は花梨)に、鏡のように映り込む美しい緑。










テレビで紹介されて実際に訪れてみるとがっかりというケースもありますが、
旧邸御室の机に映る緑は本当に美しく、幻想的で――。ここが人気を呼ぶ理由も分かります。
ただ休日は人が多く、静かな環境での庭の鑑賞や人が写っていない写真を撮るのはなかなか難しいので
(正面の縁側が庭散策の入り口になっているので、ほぼ常時、人の出入りがあります)、平日の見学がお勧めです。

机に触れたり、机にスマホやカメラを置いての撮影は禁止されているのに、
それにかまわず撮影する人や、人を押しのけてでもインスタ映えを狙ってポジションを確保する人がいたのが残念。
マナー違反が多いと今後の公開にも影響する可能性もあるので、大人としての分別を弁えてほしいですね。










大広間の縁側から外に出ると、机に緑を映していた木々で覆われた庭園が拡がります。
適所に置かれた石燈籠と石組みも洗練されたつくりに。本来は枯山水ではなく、水が流れていたとか。









個人的に惹かれたのは、この斜面を活かした庭の造形。
鞍馬石の石橋から茶室が建つ丘の上までの石段、名石の配置、植栽などが立体的な絵画のような美しさ。
高級料亭だった粟田山荘と似た雰囲気ですが、こちらの庭も作庭者は不明とされています。









そしてこの庭のもう一つの特徴は、高級な名石の代名詞とされている鞍馬石がふんだんに使われていること。
他の名園とされている庭でも、ここまで鞍馬石を多用している庭は少ないので(中庭でも多用)、
この別荘をつくった祝部鼎二という人に大きな興味をそそられます。かなりの豪商だったのかなとも思ったのですが、
名古屋大学の「人事興信録」データベースによると、単に「京都取引所取引員」との記載があるだけでした
(この京都取引所は2001年に廃止された京都証券取引所?)。










ちなみに鞍馬石は金属成分を含んでいるため、雨に濡れると錆びた風合いになります。
この特徴が「わびさび」の「さび」に通じることから、特に茶室や露地の沓脱石(くつぬぎいし)や飛石に好んで使われてきました。
もともと高価で希少な名石とされてきましたが、原材は採掘禁止となっているためさらにその価値は高まっているようです。







茶室「双庵」と中庭


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