瑠璃光院   新緑の京都

― 旧料理旅館 「喜鶴亭」― 、田中地図  料亭・高級旅館の庭 邸宅・別荘の庭




机に映る鮮やかな色合いがインスタグラムで人気を博し、一躍京都有数の紅葉の名所となった瑠璃光院
新緑の美しさも体験してみたいと思い、6月初旬に訪れました。





紅葉の季節のように予約制ではないので、ある程度の拝観待ちを予想していたのですが、
平日のほぼ開門と同時に訪れたので意外にすんなりと入れました。








ただ次から次へと参拝客が訪れ、最大の見どころ「新緑が机に映る書院の二階」は徐々に混雑。
いやーでも本当に美しい光景! 写真に何ら修正を加えなくてもこの美しさ、
たとえ周囲に人がいても新緑がつくり出すこの空間に引き込まれてしまいます。









机に映る新緑だけでなく、磨き上げられた床に映り込む新緑も幻想的な美しさ(臥龍の庭)。






インターネットやSNSでは、
拝観料が高すぎる(2000円)、混雑がエグい、実際はそれほど綺麗じゃないと言った声も寄せられていますが、
自分が訪れた日に関しては、これまで他の場所では体験できないような新緑の美しさを堪能できました。
混雑も紅葉の季節に比べれば空いており(と言っても他の寺院に比べればかなり混雑していますが)、
10分ほど周囲に誰もいない時間と空間を楽しめました。ただ机が置かれた書院の二階は人波が途切れないです。






新緑の瑠璃光院は本当に美しいです。
あくまでも自分の感想ですが、紅葉は年によって時期も色づきにもばらつきがあって、当たり外れがあると思うのですが、
新緑は毎年同じ季節にほぼ同じ美しさを見せてくれるので、拝観料の高さに見合う感動が得られるのではないでしょうか。
前年の紅葉の季節に訪れた時は、
正直あまり感動しなかったのですが(色づきがイマイチで、加工写真が溢れるインスタとは違う真実の風景が目の前に)、
新緑の季節は期待を裏切らないと思います。








庭に関しては、山門から玄関までの「山露地の庭」、書院の「瑠璃の庭」(書院二階は机が置かれた映えスポット)、
喜鶴亭の名を冠した茶庵「喜鶴亭」の「臥龍の庭」の大きく3つに分けられます。
いちばん楽しみにしていたのは、「臥龍の庭」。紅葉の季節には人が多すぎて縁側でゆっくりすることもできなかったのですが、
今回の拝観では人がいない時間もあり、
緑一色の世界の中で水が澄みわたる鏡のような池をぼ〜っと眺めながら、至福の時間を過ごすことができました。






新緑の世界は玄関から始まります。












玄関から続く「山露地の庭」は、見事なまでに美しい新緑と苔の世界








こちらは書院一階の前面に広がる「瑠璃の庭」。このふわふわとした緑の苔の美しさ、ぜひ実際に体験を!









ところどころに必ず訪問者が感動する「仕掛け」のような景色が作られれているところも瑠璃光院の特徴。
これは瑠璃光院というより、もともとは別荘、料理旅館だったという経緯が大きく影響しているかもしれません
(このため寺院と言うよりも、料亭で体験できるような洗練された和の美しい意匠があちこちに)。






瑠璃光院はもともと京都の実業家、田中源太郎の別荘として建てられました。
その別荘に「喜鶴亭」の名を付けたのは、公卿出身の明治の政治家、三条実美。
彼は上位公家(摂関家に次ぐ家格「清華家」)の出身で、明治政府では太政大臣を務め、
生前に位階の最高位である「正一位」も授けられました(正一位の生前授与は日本の長い歴史の中でわずか7人だけ)。




ただ田中源太郎が他界した後、喜鶴亭は田中が創業した京都電燈の重役らの別荘になり、
その後は京都電燈が開設した叡山電鉄(叡電)を引き継いだ京福電鉄が
高級旅館「喜鶴亭」として商業利用することになりました。





しかし旅館「喜鶴亭」もやがて廃業となり、岐阜県に本拠を置く浄土真宗の光明寺が買収。
喜鶴亭の名前は茶室の名前とし、寺院「瑠璃光院」として再スタートしました。




ちなみに瑠璃光院の前身である料理旅館「喜鶴亭」をつくりあげたのは、数寄屋造りで名を馳せた棟梁の中村外二。
庭園は「桜守」でも有名な佐野藤右衛門の一門が手がけたとされています。

このため瑠璃光院は寺院と言うより、同じ別荘建築である旧粟田山荘旧邸御室(こちらも新緑が見事)と
なんとなく共通点(立体的な造形ということだけではなく)があるような気がします。





お寺なので御本尊も置かれ、熱心な写経活動もされていますが、
庭と建物はそのまま遺したまま使用されているので、
建物は寺院の伽藍ではなく、庭は別荘(または高級料亭)の趣を残したまま。
庭ファンの一人としては、以前からのものを全て壊して刷新するのではなく、
以前から伝えられた名園でも名建築でもを大切に保存し、
次の世代へ伝えていこうという瑠璃光院の姿勢がとてもうれしいです。
さらに個人や特定法人の所有になると
南禅寺界隈何有荘のようにほぼ永久的に公開されることもなくなるので、期間限定での公開にも感謝です。


 旧粟田山荘

ところで旧粟田山荘はホテルオークラが手放した後、2023年末時点でも新たな所有者は発表されないまま。
京都では買い手が付かずにそのまま放置されたままとなっている料亭や別荘庭園も多いです。





瑠璃光院の紅葉

    
         
       
旧邸御室 祝部鼎二氏邸宅     桜鶴苑 旧山中定次郎本邸  
         
         
 
  南禅寺菊水 元寺村助右衛門氏別邸     麓寿庵 旧今尾景年邸  
         




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