修学院離宮    京都の名庭  御所・離宮  地図 

 




上離宮  上離宮窮邃亭  中離宮楽只軒  中離宮客殿  下離宮   新緑の京都


比叡山の麓、修学院の地に後水尾上皇が江戸時代初期に造営した山荘、修学院離宮。
離宮は上離宮(上御茶屋)中離宮(中御茶屋)下離宮(下御茶屋)の大きく三つに分かれ、
各御茶屋の風景と一体化した田園が山荘を取り囲みます。
後水尾上皇が精魂を傾けて創り上げた修学院離宮はまさに「帝王の庭」。
上離宮の雄大なスケールは他の日本庭園に類を見ない最大の見どころですが、
優美、緻密に造られた中離宮下離宮の庭も見逃せません。





上離宮(上御茶屋)




 窮邃亭

中離宮
を後にして、再び松並木の道に戻り、坂道を歩くこと約10分。
息が切れそうになる少し前、ようやく上離宮の御幸門に到着します。さらに石段を上がると目の前には・・・・・。
上離宮の中心に位置する人工池の浴龍池、周囲を囲む人工の堤防が空と池の地平線を形作り、
壮大で神秘的な光景が拡がります。
隣雲亭から坂道を降り、中島に渡って再び上り坂を上がったところに立つ建物は窮邃亭(きゅうすいてい)
創建当時の姿を保つ唯一の建物だそうです。






中離宮(中御茶屋)楽只軒




中離宮(中御茶屋)客殿



下離宮から、松並木を数分ほど歩くと中御茶屋に到着します。
石段を登って中門を入ると朱色の壁が美しい楽只軒客殿
周囲の庭園はとても洗練されていて日本文化の精緻とも言うべき造形ですが、
客殿の霞棚と杉戸の鯉の絵もため息が出るほどの美しさを醸し出しています。






下離宮(下御茶屋)



参観者の待合所から出て最初に誘導されるのが下御茶屋(下離宮)。
御幸門をくぐると、左手に寿月観の車寄せが視界に入ります。
白川砂が敷き詰められた中に飛び石が配置された光景は雅やかな趣。
壽月観の建物に目を取られて見逃しそうですが、
周囲に拡がる庭園「遣り水の庭」の個性的な燈籠や石組みなども見応え十分です。





修学院離宮と言えば、やはり上離宮の隣雲亭からの眺望。
江戸期に上皇が設計した壮大な構図はまさに時代を先取りした帝王の庭、
一見すると広大な公園のように見えますが、
江戸時代にこの雄大な構想が実現されたことを念頭に置くと、そのスケールの大きさ、斬新さ、美的感覚の鋭さに脱帽です。
ただ修学院離宮の素晴らしさは、その雄大さだけではなく、
各建物の雅で洗練された装飾(霞棚など)や周囲に作られた庭などにあるのではないかと。
大作りではない、細かいところにまで配慮された造形こそ、離宮建築・庭園の最大の見どころと思います。







【修学院離宮参観記】

修学院離宮の参観方式はほぼ桂離宮と同じで、参観受付は20分前から。
参観順路は下離宮中離宮上離宮の順となります。
所要時間は約90分で、歩行距離は約3キロ。
途中に少し急な階段などもあるため、なるべく歩きやすい服装や靴で参加される方が楽かと思います。
夏は暑さにも注意を!

ガイドの方はとても丁寧で、親切。
参加者個人の質問にも的確に答えてくれますし、
皇宮警察の方も、写真撮影などで少々一行から遅れる参加者がいても、
「早く行きなさい!」などのお叱りは一切なく、極めて鷹揚な対応。
ただ余りにも自己本位な行動は他の方の迷惑にもなりますし、大人としての分別は最低限必要かと
(いつ行っても、他人に配慮せず我先に写真を撮ったりする中年以上のグループがいてがっかり)。

修学院離宮の参観で敢えて難点を言えば、
中離宮下離宮の庭園をゆっくり見学できないことでしょうか。
見学の範囲が広く、どうしても建物の説明が中心となるため、
仕方がないとは思いますが、両離宮の周辺にある庭はほぼ「素通り」。
庭園が最大の目的だった自分にとっては、もう少し庭園を鑑賞する時間が欲しかったです
(ただ最大の目玉である上離宮の浴龍池はゆっくりと堪能できます)。

→2023年6月に訪れた時は、下離宮の庭について少し詳しい説明がありました。
これまでよりも少し鑑賞できる時間も長くなった感じで、「遣り水の庭」という名称も初めて訊きました。


あと修学院離宮の印象を大きく左右する重要な要素は「天候」。
これまで訪れた時期は冬枯れの季節や曇天の日だったのですが、23年6月の参観日は梅雨の晴れ間の初めての快晴!
新緑が文字通り輝いて、「こんなに美しかったんだ」「冬枯れの季節とここまで違うのか」と印象が大きく変わる参観でした。
他の池泉庭園でも、晴天の訪問が最適と思いますが、
雄大な自然に包まれた修学院離宮こそは、絶対的に晴天に訪れるべきと痛感しました
(できれば上離宮からの眺望が逆光にならない午前中がお勧めです)。

ところで修学院離宮。地方の大名庭園よりはるかに上品で美しく、これだけの見どころがあるにもかかわらず、無料。
基本的に宮内庁管轄の庭園は桂離宮を除いて無料ですが(桂離宮は人数制限のため敢えて有料化したそう)、
今後のあり方を考慮すると、有料化を検討しても良いのではと思います。
数千円を徴収してもおかしくないレベルの庭園を無料で見学できるのはうれしい限りですが、
広大な施設だけに植栽の管理や建物の保守、巡回などの人件費など膨大な維持費が必要なはず。
桂離宮とともに日本庭園の最高峰であるこの造形を後世にそのまま伝えるためなら、有料化も賛成です。

(インスタ映えを謳い文句に商業ベースで法外な拝観料を徴収している某寺院には、反対に宮内庁の姿勢を見習ってほしいですが)。




     
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建物、庭園の解説などについては、「財団法人 伝統文化保存協会」刊行の「修学院離宮」を参照させて頂きました。